円福寺 岩槻区釣上1423


県道324号線を笹久保方面から南下して尾ヶ崎を過ぎ、さらに進むと釣上交差点で国道463号線バイパスと交差する。交差点の500ｍほど手前、道路左側に円福寺の入り口があり、小堂と三基の庚申塔が並んでいた。


小堂の中、地蔵菩薩立像 延宝8(1680)堂内にあるためか風化も見られず、文字も鮮明に残っている。光背右脇「為奉造立念佛供養地蔵菩薩一躯に清安穏也」左脇に造立年月日。その下に釣上村、本願とあり個人名、脇に同行男子廿一人、女子廿人と刻まれていた。


三基の庚申塔のうち、左 庚申塔 寛政6(1794)日月雲 青面金剛立像 剣・ショケラ持ち六臂。塔の正面、右半分だけ黒ずんでいて、白カビも多いのはなぜだろう？青面金剛は髪を逆立てにらみつける。


江戸時代後期に多く見られる裾が跳ね上がった衣装。邪鬼から三猿にかけて特に白カビが多い。左の猿は身をよじらせ、中央の猿は正面向き、右の猿は中を向くという、ちょっとユニークな三猿。二鶏は見当たらない。


塔の左側面は無銘。右側面に造立年月日。その下に世話人一名の名前が刻まれていた。


中央 庚申塔 元禄9(1696)日月雲 青面金剛立像 合掌型六臂。大きな笠を持つ角柱型の庚申塔。月天の下に梵字「ウン」を刻む。三角形に髪を結い上げた青面金剛は三眼、バランスよく邪鬼の上に立っている。


足の両脇に二鶏を線刻。雄鶏と雌鶏は向き合うことが多いが、ここでは雌鶏が外を向いている。手も足もなく、置物のような邪鬼。その下に正面向きの三猿が彫られていた。


塔の両側面には大きな蓮の花が彫られていて、その開いた空間に銘が刻まれていた。左側面には造立年月日。さらに武州崎玉郡釣上村。右側面「奉造立庚申像一躯二世安樂攸」


右 庚申塔 宝暦13(1763)日月雲 青面金剛立像 剣・ショケラ持ち六臂。塔全体に白カビが目立つ。


足の両脇、真っ白な中に二鶏。邪鬼は右足をもち上げてもがいている。その下の三猿は両脇が内を向く構図。


塔の左側面上部に講中とあり、その下に十数人の名前。右側面、梵字「ウン」の下、右に「奉造立青面金剛」中央に造立年月日、左脇に武州岩槻領釣上邑講中敬白と刻まれていた。

釣上交差点東路傍 岩槻区釣上680付近


国道463号線バイパスの釣上交差点のすぐ南を左折して東に進み、次の角を右に曲がると、左手路傍に二基の庚申塔が並んでいる。


左 庚申塔 享保2(1717)日月雲 青面金剛立像 合掌型六臂。上部に梵字「ウン」青面金剛はベビーサタンのようでかわいい。


足下にはラフな邪鬼と三猿。二鶏は見当たらない。


塔全体に剥落が見られる。左側面に造立年月日。その脇に釣上村施主。右側面には「奉」の文字だけが残っていた。


右 庚申塔 天保14(1843)塔は一部が剥落。正面に「庚申塔」下の台の正面には右に小さく世話人とあり、十数人の名前が刻まれている。


塔の左側面、下部に小さく釣上村、右側面には造立年月日が刻まれていた。こうやって見てみると崩落は時間の問題という感じがする。こんな言い方もおかしいが、頑張っていただきたいものだ。

玉泉寺 岩槻区釣上469


県道324号線を笹久保方面から南下すると釣上交差点で国道463号線のバイパスとぶつかる。このバイパスは2001年に完成した新しいもので、浦和市から越谷の日光街道までの区間はこのバイパスと本来の国道463号線、通称越谷街道が平行している。釣上交差点からさらに南に向かって500ｍほど進むと道路右手に釣上新田の保寿院、その少し先、道路左側奥に玉泉寺がある。お寺の入口から正面に本堂、その参道左側には十五年ほど前に建立された新しい六地蔵が立っていて、その六地蔵の裏に四基の石塔が並んでいた。


左から 庚申塔 寛文12(1672)江戸時代初期に多く見られる大型の板碑型。下部に大きく蓮の花を彫る。カビはそれほどひどくないのだが、経年のため彫りが浅くなっていて文字は不鮮明、読み取るのが非常に難しい。


塔の正面梵字「キリーク」の下、まず二行に渡って銘が見える。ところどころ「遍」とか「相」とか読めるが全体としてはほとんど判読できなかった。その下中央は「奉待庚申供養現當二世安樂」だろうか。両脇に造立年月日。続いて「結衆敬白」その下に十名ほどの名前が刻まれている。窓の縁に寄り添うように座る丸みを帯びた三猿は、彫りも厚くとても可愛い。こういった板碑型の文字塔における三猿は、その存在感が際立っていて、このタイプの庚申塔は「三猿庚申塔」と呼ぶのが適当ではないだろうか。


その隣 地蔵菩薩立像 寛文4(1664)きれいな舟形の光背、上部に梵字「カ」丸顔で優しそうなお地蔵様。光背右脇、頭のすぐそばに「寒念佛供養」その下両脇に造立年月日。足の両脇に四名の名前が刻まれていた。


続いて地蔵菩薩立像 安永9(1780)長方形の光背に白カビをいっぱいまとった地蔵菩薩立像を浮き彫り。光背右脇「為一切精霊頓？證菩提也」左脇に造立年月日。その下に施主名が刻まれている。


右端 馬頭観音塔 明治21(1888)駒型の石塔の正面に「馬頭觀世音」両脇に造立年月日。上部に小さな馬頭が浮き彫りされているが、文字塔ではこのような例は今まで見たことがない。塔の左側面に施主一名の名前が刻まれていた。


入り口の右側、ブロック塀の前に卵塔などが集められている。歴代住職の墓石らしい。中央に笠付の大きな石塔が立っていた。


大乗妙典供養塔 享保14(1729)塔の正面「奉読誦大乗妙典壱千部供養塔」左側面に「為有縁無縁三界萬霊平等利益」右側面には為 天下泰平・國土安穏・五穀豊穣と刻まれている。


裏面はブロック塀との隙間が無くやっとその一部が写っていた。中央に造立年月日。両脇に渡って醫王山玉泉寺、右下に現住覚海積圓建立、左下に石工名が刻まれている。


本堂右側の墓地の奥、道路に向いて大きな寺標が立っていた。その左脇、ブロック塀のフェンスの向こうに二基の庚申塔が並んでいる。


左 庚申塔 享保4(1719)唐破風笠付きの角柱型の石塔の正面を凝った形に彫り窪めて、外に日月雲、中に青面金剛立像 合掌型六臂。つり目三眼福耳の青面金剛はドクロの首輪をかけている。足下に真っ白な邪鬼。その両脇は二鶏か。その下には正面向きの三猿。さらにその下の台の正面に講中十数名の名前が刻まれているが、フェンス下のブロック塀のために残念ながら写真は撮れなかった。


塔の右側面 中央「奉造立庚申石塔供養二世安樂所」右下に武州釣上本田村、左下に講中敬白。


左側面は道標になっている。手前 そのはし□神明さんけい道。続いて ぢおんじ江すぐみち□□。奥に造立年月日。その下に講本願とあり、二名の名前が刻まれていた。


右 庚申塔 元治元年(1864)角柱型の石塔の正面に「庚申塔」右側面に造立年月日。左側面は無銘。


下の台は二段になっていて上の台の正面に三猿が彫られている。


下の台はしっかり確認できるような写真は撮れなかったが、その正面には世話人とあり、続いて二十数名の名前が刻まれていた。

神明宮東の川べり角 岩槻区釣上313北


玉泉寺の北を東西に通る道を東に向かう。左手に神明宮を見てさらに400ｍほど進むと、用水路に架かった橋の手前の角に小堂が立っていた。この橋を越えた先は越谷市になる。


小堂の中 庚申塔 享保20(1735)唐破風笠付きの角柱型の正面 日月雲 青面金剛立像 合掌型六臂。時代なりに風化が感じられ、像の表面は全体に丸みを帯びていた。青面金剛は、あるいは人為的なものなのか、顔が潰れていて表情などははっきりしない。足の両脇に二鶏。足下には頭を左にラフな邪鬼。その下に三猿。両脇の猿は内を向く構図をとる。塔の両側面に紀年銘などの銘があるが、堂内は狭く写真は撮れなかった。


小堂の脇 馬頭観音塔 昭和41(1966)塔の正面に「馬頭觀世音」両脇に造立年月日。昭和、しかも戦後に建立された馬頭観音塔は珍しい。